ゴム・樹脂産生植物の研究

Hitz協働研究所では、ゴム・樹脂産生植物の機能性解析に取り組んでいます。
様々な植物由来ポリマーがある中で、特にゴムとして知られるポリイソプレンは年間1000万トン以上がバイオマスより供給される、産業界にとって極めて重要な戦略物質です。しかしその重要性にも関わらず、生成機構を含む植物学的な研究を取り扱っている研究機関は世界的にも少ないのが現状です。

生ゴム

当該協働研究所では主要な研究テーマのひとつとして、植物が代謝生成するゴムについての基礎研究を行っています。
天然ゴムはポリイソプレンを主成分とする植物由来ポリマーで、植物には分子量100万を超えるポリイソプレンを生成できる種があることが知られていますが、植物はなぜこのようなポリマーを体内に生成するのか理由は良く分かっていません。これからの研究が待ち望まれる分野です。

シス型ポリイソプレン

ポリイソプレンは、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)を基本ユニットとするポリマーであり、天然のポリイソプレンは1,4結合により重合することによって構成されます。1,4結合による天然のポリイソプレンはその結合様式により、シスポリイソプレンとトランスポリイソプレンの2種類に大別され、このうちシスポリイソプレンが天然ゴムの主成分です。
これまで2500以上の植物種がシスポリイソプレンを生成することが知られていますが、中でもブラジル原産のトウダイグサ科のパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)は、その生産量の多さから天然ゴムの生産樹として東南アジア諸国等で盛んに栽培されています。このほかメキシコやアメリカ南部に生育するグアユール(Parthenium argentatum)やロシアタンポポ(Taraxacum koksaghyz)を用いた天然ゴム生産も試みられています。

トランス型ポリイソプレン

一方、トランスポリイソプレンを生成できる種は、トチュウ(Eucommia ulmoides)、グッタペルカノキ(Palaquim gutta)、バラタゴムノキ(Mimusops balata)等わずか数種しか知られていません。トランスポリイソプレンはその立体構造の違いから結晶性が高く、常温ではゴムというより樹脂のような性質を示します。
ゴム状性質を示すシスポリイソプレンに対し高分子量のトランスポリイソプレンを生成する種はごく少数しか見つかっておらず、これも植物生理学的に不思議な点です。これまでの分子生物学等の研究から、シスポリイソプレンとトランスポリイソプレンの合成酵素は全く異なる構造の酵素であることも分かり始め、ポリイソプレン代謝の進化学的側面からも興味深い部分です。
また、シスポリイソプレン、トランスポリイソプレンとも生成できる植物は様々な種にわたって見出され、これらの植物の進化、分類学的な研究も今後の進展が期待されます。


パラゴムノキの乳管細胞

Hitz協働研究所では、バイオ分野の基礎研究として、これらのゴム・樹脂産生植物の研究に力を入れています。これまでブリヂストンとの共同研究により、パラゴムノキのラテックス生産部位を蛍光顕微鏡解析等の組織学的研究から明らかにしたほか、中でも特にトランスポリイソプレンを産生するトチュウの解析に力を入れています。
トチュウは果皮、葉、茎に著量のトランスポリイソプレンを生成するほか、温帯性樹木であり高い耐乾性を所持します。このため、国内耕作放棄地や温帯ステップ周辺荒廃地に大規模植林が出来るなど、ポリイソプレン生産の樹種として好ましい性質を持ちます。さらに、既存化学工業では合成が難しい分子量200万を超える高分子トランスポリイソプレンを生成できる(既存の石油由来品は分子量が数万から数十万程度の分子の混合体である)特徴を持つため、実用化を見据えた基礎研究を進めています。